白柳淳作品集W 曲解説

1.彼方へ 
クラシックの作曲家が活躍した時代には想像もつかない乗り物が現代には存在する。 空を飛ぶ飛行機もそのひとつである。 雲を突き抜けて飛んでくる太陽の光のようにどこまでも真っ直ぐに飛んでいくその機体には人々の夢が積まれている。
2005年4月 第33作
(CD解説より)
2.ひとすじの闇 
真っ暗闇の中に差す一筋の光明が人々に希望を与えることもあれば、 たったひとつの些細な出来事が大きな不安にまでなることもある。 人の幸せと不幸せはいつも当たり前にあるものではないと思う。
2005年4月 第34作
(CD解説より)
3.約束の白い薔薇 
長野県東御市にあるギャラリーカフェ「すみれ屋」にはお客さんに開放しているフラワーガーデンがある。 各々どんな花を植えても構わないが、ひとつだけ約束がある。 それはオーナーが好きな白い薔薇を一株植えてほしいと言うことだ。 海の向こうからやってきた薔薇が異国の風に揺られながら人の心をつないでいる。
2005年5月 第35作
(CD解説より)
4.凍りついた記憶 
2001年、本橋成一監督の映画『ナージャの村』と『アレクセイと泉』を観た私は2002年11月、 日本チェルノブイリ連帯基金の医療チームに同行し、 その舞台となったベラルーシ共和国ドゥヂチ村、ブジシチェ村を訪れた。 チェルノブイリ原発事故以来もう元の姿に戻ることのない故郷は人々の記憶の中にしか存在しない。
2002年11月 第24作
(CD解説より)
5.古より永遠なるもの 〜彫刻家・浅香弘能氏の作品によせて〜 
はるか昔より永遠の形を持って存在していた石を彫刻家は自らの作品へと変えていく。 その行為により石は石としてではなく、 作家の作品として永遠の時を刻むことになる。人々の心と共に。 大阪府堺市にあるギャラリー「いろはに」で行われた石の彫刻家、 浅香弘能氏の作品展で演奏するために作曲した。
2006年11月 第43作
(CD解説より)
6.伊藤牧場の「わか」 
北海道根室市にある伊藤牧場の犬「わか」のユーモラスな様を曲にしたもの。 人が来ると寄ってきて、撫ぜてやると仰向けに寝っ転がるのだ。 手を休めるとすぐ立ち上がり、撫ぜるとまた寝転がる。 帰るときは名残惜しそうに見送ってくれる。 友人の石井由紀子さんに「この犬で一曲出来ない?」と言われて作ってみた。
2007年2月 第48作
(CD解説より)
7.悲歌 
人には「生まれや育ち」によって個性があり、 相容れないもの同士がぶつかり合う悲劇は起こってしまう。 どちらも純粋であろうとすればするほど深く激しく。 お互いがお互いを理解し受け止める器を持ち、認め合い歩み寄る日は来るのだろうか。
2005年5月 第36作
(CD解説より)
8.躍動 
深夜に街角や駅前でダンスの練習をする若者を見かける。 中には真剣に夢中で踊り続ける人もいる。 こんな曲がギターで弾けたなら面白いかもと思い立ち作曲した。 踊り続ける彼らが夢見る未来はギターを弾いている私と同じなのかも知れない。
2006年6月 第41作
(CD解説より)
9.ある雪の夜に 
クリスマスの季節になると決まってクリスマスソングのリクエストが来る 。私は人が喜んでくれるのは嬉しいのだが私自身がクリスマスに意味を見出せず、 そういう曲は演奏しないでいた。 ただ人々が幻想的に白く染まった世界に日常を忘れて夢を描きたくなるのは私にも分かるような気がする。 そんな思いを私なりにこの曲に託した。 
2005年10月 第39作
(CD解説より)
10.氷海 〜山崎猛作品集「氷海」によせて〜 
2006年8月23日、私は北海道中標津町の佐伯さんに、知床半島の付け根、 斜里町にある北のアルプ美術館に連れて行っていただいた。 この日は奇しくも美術館の館長である山崎猛さんの結婚記念日でギター演奏のお礼にと「氷海」と題された写真集を頂いた。 そこには彼が20年追い続けたオホーツク海の流氷が写されていて、 これだけの広さと深さを写真から感じた事は今までなかったので本当に驚いた。 私は深い敬意を持ってこの曲を作曲し、 山崎猛氏から写真集と同じタイトルを付ける事を許可していただいた。
2006年9月 第42作
(CD解説より)