目覚めは森の息吹の中で 曲解説

1.目覚めは森の息吹の中で 
2004年5月、私は親しい仲間が主催している合宿に参加した。 山梨県の清里の森の別荘地。 神奈川のレストランでの演奏を聴いてくれて「あなたのギターはなかなかいいわ」と 声をかけて頂いてからの付き合いだ。 朝起きてコーヒーを飲んでいる私に 「あなたのCDなかなかいいけど、こんなときにコーヒー飲みながら聴く曲がないわね」と 御言葉を頂戴し、じゃあ作ってみるかと思い立って作曲。 しかし朝の森の空気と時間の流れを一曲にまとめるのは大変で、 曲に半年、タイトルに一月かかった。 お陰で仲間も私も納得いく曲に仕上がった。
2004年 第30作
2.川 
この曲の前半部分を作ったとき、たくさんの友人が続きを期待してくれた。 私は自分の作品を通じて人と交流することの楽しさから、後半を3拍子で 軽快に歌い上げた。名付け親は友人の清水君。「川が流れ始めた最も緩や かな部分のような曲だ。5楽章くらいで、完結する。後4楽章がんばれよ」 という言葉より。ちなみに2楽章を作り損ねたので、現在まで、これだけ で終わっている。河口君は蝶が舞う姿が目に浮かぶといってこの曲を愛した。 何度彼のために演奏しただろうか。
1995年 第3作
(CD解説より)
3.蛍の星空 
2001年6月、長野県小県郡丸子町。私は、初めて蛍の光の中に立った。 この時期にしか、そして澄んだ流れの中にしか見ることのできない幻想的な 世界。蛍が求愛のために光っている、それは彼らにとっては生きるための 行動でしかない。私達はこれ以上、他の生き物の居場所を奪ってよいの だろうか。私にできることは水を汚さないことと、蛍の美しさを伝えて いくことだ。タイトルはピエール・ブッシュ氏による。 彼とはこの日初めて出会い、共に蛍を見た。彼の「芸術家!曲できたか!」 という言葉からこの曲を作り、彼は1週間後、栃木県からこの曲を聞きに来て くれ、タイトルを付けてくれたのだ。
2001年6月28日 第16作
(CD解説より)
4.残り灯 
木々の間よりこぼれるかすかな民家の灯。友人が、 このようなしっとりとした夜景が好きだと話していた。 真田町から東部町へ抜ける4号線(旧有料道路)から見た夜景を 彼女のイメージと重ねて作曲したもの。初鹿照子さんの朗読に よる藤沢周平『おとくの神』の伴奏でテーマとして使った。
2001年 第13作
(CD解説より)
5.木もれ陽 
谷口史香さんは、私が大学で単位を落としたスポーツで知り 合った後輩だ。2001年1月13日、彼女は、お金の無い私に、 「お祝いはいらないし交通費も出す、ギターを持って来て」と言った。 私は長野から北九州に行って、彼女のために披露宴で演奏した。 そして、引き出物を立ち寄った本屋に忘れて来たのだった。
2001.1.13初演 第9作
(CD解説より)
6.淡雪の詩 
2004年3月21日 長野県真田町は春を目前にして最後の大雪となった。 私は隣町の「すみれ屋」という喫茶店に向かい、 その日のオーナーとの語らいの中からこの曲は生まれた。 「この時期のうっすらとした雪を花のように纏う木々。 花に積もる雪を透かして浮かび上がる色とりどりの花びら、 素敵だと思わない?こんなのが音楽にならないかしら」とオーナー。 雪で空いている店でコーヒーを飲む事しか考えてなかった私が、 何故かその夜この曲を作ってしまった。 翌日オーナーに曲を聴いて頂き、そしてこのぴったりなタイトルを付けて頂いた。
2004年 第28作
7.鏡池 
三方を山に囲まれたこの池は、長野県の戸隠村にある。 今は車で池の前に入っていけるのだが、昔の人々は歩いて ここにたどりつき、そして、水面のもやが晴れた瞬間に 出会うことが、あったのだろうと想像して作曲した。
2001年11月 第18作
(CD解説より)
8.五月雨と藤の香り 
雨が降っていた。出かけるのもめんどうだった。彼女が「曲を作ってくれ」 と言う。私は「いやだ」と言った。やがて、彼女が戸を開けた。 「藤が咲いている。香りがする」と彼女が言った。私は、どんな時にも 心を開いて幸せを感じる彼女は、すばらしいと思った。私はいつもその 暖かな心を持っていてほしいと願いを込めて、この曲を作った。 しかし彼女は、「天の贈りもの」が気に入っていて、いまだにああいう曲を 作ってくれと言っている。
2002年5月 第20作
(CD解説より)
9.地球(ふるさと)への祈り 
本橋成一さんが、上田映劇で『ナージャの村』を上演した。 この映画はチェルノブイリの原発事故で、村を追われた人々が、 放射能の汚染による危険地域である故郷の村に人間らしい生活を 求めて、生きる様子を描いた記録映画である。ボランティアで写 真を撮りに行った彼が残酷さのあまり撮影できなかった現場から、 生きるということを世に問うべくそして伝えるべくして撮った、 地球への、そして人々の心へのメッセージである。彼の生き方に 心をこめてこの曲を贈る。
2001年6月17日 第15作
(CD解説より)
10.思い出はいつもやさしく 
思い出は、それがどんなつらい時のことでも、直面しているその時より つらくはなくなっている。今どんなにつらくても、いつかそれを過去の こととして振り返る日が来ると私は思っている。ピアノを両手で弾く のは難しくても、右手と左手が同時でなければやさしいのでは、と思って作曲した。
2001年 第5作
(CD解説より)