白柳淳作品集T 曲解説

1.朝陽のように 
作曲を中断し、ギター製作を学んでいた私の過去の作品を評価してくれた陽子さん。 彼女はギター工房で塗装をしている方で元同僚かつ親友かつ理解者だ。 彼女はセーハという、複数の弦を一度に人差し指で押さえる奏法が苦手だったため、 それをしなくてよく、やわらかく暖かくやさしい曲を作ってほしいと依頼され作曲し たもの。陽子さんの「陽」の字を用いて、イメージ通り名付けた。
2000年 第7作
(CD解説より)
2.追想 
21才の時、私から去った彼女が私に残した感情により、 何も手につかない日々を送っていた。この感情を音楽で 表現することで自分を取り戻そうと初めて作曲した処女作。 タイトルは私の妹が付けてくれたもの。
1994年 第1作
(CD解説より)
3.風の香り 
当時友人の河口君が「終着駅」とイメージをあてはめ、 呼んでいた私の作品に、長調の中間部を加え、「風の香り」 とした。物事の感じ方はそれをとらえる人の心によって様々に 変化していくものだ。時折心を暖める風が、やはり孤独を実感 させて去っていく。
1994年 第2作
(CD解説より)
4.川 
この曲の前半部分を作ったとき、たくさんの友人が続きを期待してくれた。 私は自分の作品を通じて人と交流することの楽しさから、後半を3拍子で 軽快に歌い上げた。名付け親は友人の清水君。「川が流れ始めた最も緩や かな部分のような曲だ。5楽章くらいで、完結する。後4楽章がんばれよ」 という言葉より。ちなみに2楽章を作り損ねたので、現在まで、これだけ で終わっている。河口君は蝶が舞う姿が目に浮かぶといってこの曲を愛した。 何度彼のために演奏しただろうか。
1995年 第3作
(CD解説より)
5.バッハへのあこがれ 
単純にバッハみたいな曲を作ろうと思い手がけた作品。ギターらしさと バッハらしさの融合に、自分らしさを感じて自画自賛している。
1995年 第5作
(CD解説より)
6.木もれ陽 
谷口史香さんは、私が大学で単位を落としたスポーツで知り 合った後輩だ。2001年1月13日、彼女は、お金の無い私に、 「お祝いはいらないし交通費も出す、ギターを持って来て」と言った。 私は長野から北九州に行って、彼女のために披露宴で演奏した。 そして、引き出物を立ち寄った本屋に忘れて来たのだった。
2001.1.13初演 第9作
(CD解説より)
7.出口なき迷路 
すべてをみんなうまくいくように、たくさんの事柄を同時に抱え 込んだ時、どうしても諦めなければならない事もある。そんな時に 諦めることのつらさを出口なき迷路に例えた。作品の内容は、 演歌やファド、フラメンコの香りに、ワルツ、4拍子、フリーテンポと 歌い方が自由でかつ、流れが無理なくうまくまとまったようだ。
2001年 第11作
(CD解説より)
8.天の贈りもの 
友人が、妹の結婚式で義弟の母に献身的に助力をし、 「天使のようだ」と言われた。彼女のためにホワイトデーに作曲 したもの。イントロとエンディングでは、天使の舞い降りる様子を音にした。
2001年 第12作
(CD解説より)
9.残り灯 
木々の間よりこぼれるかすかな民家の灯。友人が、 このようなしっとりとした夜景が好きだと話していた。 真田町から東部町へ抜ける4号線(旧有料道路)から見た夜景を 彼女のイメージと重ねて作曲したもの。初鹿照子さんの朗読に よる藤沢周平『おとくの神』の伴奏でテーマとして使った。
2001年 第13作
(CD解説より)
10.地球への祈り 
本橋成一さんが、上田映劇で『ナージャの村』を上演した。 この映画はチェルノブイリの原発事故で、村を追われた人々が、 放射能の汚染による危険地域である故郷の村に人間らしい生活を 求めて、生きる様子を描いた記録映画である。ボランティアで写 真を撮りに行った彼が残酷さのあまり撮影できなかった現場から、 生きるということを世に問うべくそして伝えるべくして撮った、 地球への、そして人々の心へのメッセージである。彼の生き方に 心をこめてこの曲を贈る。
2001年6月17日 第15作
(CD解説より)